シャンバラなブログ

シャンバラな日々のお仕事以外の旅やつれづれをつづります。

養老天命反転地 田中 泯

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近江の国(滋賀県)と美濃の国(岐阜県)の間を隔てる養老山脈は
不思議なバイブレーションが感じられるところです。
パワースポット、という言い方はあまり好きではありませんが、
まあ、そういったところなんでしょう。

車で桑名から走ってゆくと
濃尾平野からいきなりそそり立つ養老山脈が眼前に立ちはだかります。
平らな所から急に山が生えてきたように山が伸びています。
麓は果樹園が続き、沿線はアメリカの田舎のすたれた街の風情です。
つぶれた飲食店やパチンコ屋がいい感じでレイドバック感を醸しています。
山脈に沿って車を30分くらい走らせて北上してゆくと、養老公園があります。

一帯は小さな遊園地やこども園や養老の滝や昔ながらの土産物屋があって、
昭和の観光地といったレトロな風情が漂っています。

そこに荒川修作とマドリン・ギンズという人が養老天命反転地という
巨大な現代美術のテーマパークをつくりました。
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荒川修作は2年前5月19日にこの世を去りました。
荒川修作の命日のこの日、
田中泯の「場踊り」があるということをネットで知り、
ぜひ見に行こう!と思ったのです。
何千円もするチケットなら家族で行くには経済的に苦しいので
即却下、となるところですが
お代は入場料のみです。^^大人700円子供300円
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ぼくらがはじめてここに来たのは
もう、13年も前のことでした。
上の子供がまだ3歳くらいで
樹も植えたばかりで小さく
たくさんの彫刻やオブジェが目立ったのですが、
子供にとっては迷路と滑り台と
ビックリハウスとトンネルと地図と
大好きなアイテムが「リアル」に存在する場所です。
「ヨーローテンメイハンテンチ」
と意味はわからずとも気に入ったのか
何度もくりかえしていました。
以来4年に一度くらいの割で訪れて今回で4度目です。
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15年の年月を経て
樹木が伸びて巨大な植木鉢のようになっていました。

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巨大な植木鉢の中に
紛れ込んだアリのような気分になってきます。
遠近感がわからなくなります。
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3時前になると2-300人くらいの人が集まってきました。
急な斜面の狭いばしょに結構ぎっりり詰めかけていました。
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田中泯さん、はもう昔から活動しているダンサーで
ぼくも名前くらいは知っていましたが
ダンサーというよりも、
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メゾンドヒミコという映画のゲイバーのママ役や
NHK大河ドラマの「竜馬伝」に吉田東洋という土佐藩の家臣の役で
出演していた俳優として知っていました。
最後に岡田以蔵(佐藤健)に暗殺されるのですが、
雨の中での暗殺シーンが印象深かったです。
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ダンスは好きですか?
どうして人は踊るのでしょう?
バレエやヒップホップ、日舞、フラメンコ、インド舞踊、民族舞踊、社交ダンス
ダンスもいろいろありますが、
共通しているのは
どれでもある程度リズムやメロディがありますし、
人に見せるためのダンスです。
ダンススクールも一杯ありますよね。
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そんなダンスとは全く無縁だし、リズム感も悪いぼくらでも
気持ちのいい音楽があると踊りたくなります。
もちろん、人に見せるためのダンスではありませんが
それでも全く見て欲しくないかというと
コンサートやクラブやおまつりで踊るのは
ステージで踊るほどではないけれど
ある程度の人目には惹きたい。
という気持ちは大小ありますが、多くの人が思うことでしょう。
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中には体をすこしだけ動かしてノっているだけだったり、
指先だけでリズムとったり、
ひとそれぞれで違うでしょう。
どこからか踊りでどこまでが踊りなのか?
その違いはどこから来るのか?
踊りと日常の境界線はどこかを、
突き詰めて踊るのが田中泯さんではないのかなあ。
なんてHPにあるエッセイを読んで思いました。
生きることからダンスは生まれる 田中泯
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それを読んだ上で田中泯さんの養老での踊りを思い出すと
なんとなくだけどどうしてそういう動きをするのかの由来のようなものが
見えた気がします。が、
それもまた曖昧で、「それがそうだ、」
と決めた瞬間に消え去って行くものなのが田中泯さんの踊りである。
と言った瞬間に
田中泯さんはまた別の場所に動いて行く。
踊りを言葉で説明しようとすると
エンドレスに合わせ鏡のように時間や空間が続く
言葉で説明不能なところになります。
言葉で説明できないから踊るんだとろうね。
説明できたら踊りはいらないのでしょう。
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茶色染めの着物に下駄、ソフト帽をかぶって
斜面の上の方からゆっくりゆっくりおりてきます。
土蜘蛛。のような印象を受けました。
這い上がろうとしてまたもがき
樹と交わり歓喜の踊りから
迷路の中で胎児にもどり
大地から生まれでて
天地に向かって養老の山々にむかって
「ここだー!」と叫びました。
荒川修作の魂を呼んでいるのでしょうか?
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なんて自分のなかでたくさんのストーリーが浮かびました。
みんなそれぞれいろいろなストーリが浮かんでいるのかもしれません。
そういう意味では演劇のようでもありました。
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あるいは泯さんの一瞬の動きそれぞれが
もうカタチとして存在しています。
どの一瞬でもいいからランダムに切り取っても
彫刻のカタチとして完成しているみたいな。
無駄な音が全くない美しい音楽のように
ダンサーのカタチには無駄な動きがありません。
コマ送りの写真集をみているようでもありました。

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そうして次はどう展開するのか?
ドラマを見ているようにワクワクドキドキしました。
瞬間と連続性と場のチカラを呼び覚ます。
乱暴ですがまとめるとそういった感じ。
泯さんの踊りの印象でした。
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養老山脈の北には関ヶ原があります。
その北には伊吹山がそびえずっと深い山が連なっています。
関ヶ原は合戦も有名ですが
東海道新幹線と名神高速が走っています。
日本の大動脈が2本走っています。
西と東を最短距離で結ぶには
この関ヶ原を通るしかないのです。

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そういういろいろな気があつまる濃密な場が
養老の独特な雰囲気を醸し出してくれているのかもしれません。

パワースポットというと
運気上昇とか金運やなにかそういったものと
ご利益系になってしまうので
どうもあまり使いたくない言葉なんですが、
地球かと宇宙からの磁場のような
ものがそこだけ集中してるという意味では
ホットスポットというべきなのでしょうが
さらに使いたくないことばなので
やはり
そこは
養老天命反転地と呼ぶのがふさわしいのでしょう。